まだカーナビが今より高価だった時代の話。
ある車好きの男がいた。彼はかなりの方向音痴でドライブへ行くと必ずと言っていいほど道に迷っていた。
なので、当時出たばかりのカーナビが欲しくてたまらなかった。店を回ったがどのカーナビも高くて手が出せない。
ある日、中古の車パーツ店に行くと相場の3分の1程度の値段でカーナビが売られていた。男はその格安カーナビを即買いした。
早速、車に装着し電源を入れる。すると以前に使っていた人が登録したポイントが残っていた。
ドライブがてらにいってみますか!
男はそのポイントへカーナビを使って行ってみることにした。
「道なり5キロです。」
「300メートル先、信号を左折です。」
カーナビは音声で道案内してくれ、男はまったく道に迷う事なく目的地に近づいた。
こんなに快適なドライブは初めてだった。うかれていた男だったが、気がつくと山の中を走っていた。
「この先急カーブです。」
カーナビが告げる。
そして、カーナビはカーブの真ん中で
「目的地に到着しました。」
何も無いカーブの真ん中はまぎれも無く目的地だった。男は不思議に思ったが車を降りてみる事にした。
そこには歪んだガードレールと献花があった。
そして、エンジンを切った車からなぜかカーナビの声がする。
「ここが私の死んだ場所です。」
あとから知った話だが、このカーナビの持ち主はその急カーブを曲がりきれずに事故死したそうだ。