夏休み、小学生と彼の兄は両親とともに母親の実家へ遊びに行った。
都会生まれ、都会育ちの兄弟にとって田園風景が広がる母親の田舎は新鮮だった。兄弟は母親の実家に滞在中は常に外で遊んでいた。山や川へ行ったり、田んぼ道を散歩したりしていた。
田んぼを歩いていると案山子が立っている。案山子も都会ではなかなか見る事ができない。案山子を見ていると弟があるものに気づく。
案山子の後ろの狭い路地に人間くらいの大きさでくねくね動く白いものがある。
兄にもそれは見えているが距離が遠すぎてくねくねの正体が何なのかはさっぱりわからなかった。ビニール袋か何かが落ちていて風で動いているように見えるだけだろうか?一瞬、兄弟はそんな会話をしていたが、今、まったく風邪がない事に気がつく。
確実に白いくねくねがあそこにいて、自分で動いている。
兄は自分が双眼鏡を持っている事に気がつく。「双眼鏡で正体を見よう!」兄がいった。兄が双眼鏡でくねくねを見た。「あっ・・・」兄は何かに気づいた様な声を出した。弟が「兄ちゃん!何だった!?」と問いかけても何も答えない。
「僕も見たい!」弟はそういうと兄から双眼鏡をぶんどった。双眼鏡で白いくねくねの正体を見ようとした瞬間。「こらっ!」という声がして、振り返るとすぐ後ろに祖父が立っていた。いつも優しい祖父だったが、そのときはものすごく怖い顔をしていた。「アレの正体を見たのか?」、兄は何も答えず、弟が説明すると、「アレの正体を見てはいけない!早く帰るぞ!」といって2人を無理矢理車に載せてその場を立ち去った。車の中から弟が見ると白いくねくねはまだ動いていた。
アレは一体何だったのか? 車中で兄はずっと笑いながら、くねくね、くねくねと変な動きをしていた。
それから母の実家に戻ったが、なぜかすぐに変える事になった。しかし、兄は祖父母たちが引き取るという。兄は、くねくねを見たすぐ後の状態のまま、くねくね、くねくねと変な動きをしながら笑い続けている。
祖父は言った。「この子は都会で生活はできないだろうからココで面倒を見るよ、何年か経ったら田んぼに放してやるのが一番良い。」
祖父の言っている事は全く意味はわからなかったが、うちではその事件以降、兄は死んだ事になっている。その真実を知っているのは僕だけだ。