ある若いカメラマンがとある崖で写真を撮影していた。その崖は海と垂直にそりたち、白い水しぶきが美しかったという。
カメラマンはレンズ越しに何か白いものが横切るのに気がついた。
その瞬間。
「自殺だ!」
誰かが叫んだ。カメラマンが見たものは白い服を着た女性であった。その女性はカメラマンの100メートルくらい先の崖の上から身投げをした。
カメラマンは職業病のように反射的にカメラのレンズを切っていた。
そのあと警察が着て、目撃した情報などを話した、カメラマンは警察署から出るときに自殺者の母親と出くわした。カメラマンは母親に声をかけ実は自殺の瞬間をカメラに収めてしまった事をうちあけた。
母親は写真を現像して見せてほしいと言った。娘は身投げをするような子じゃなかったのでもしかしたら誰かに押されたのかもしれないから現場の写真をみたいという。
カメラマンはこれも自分の仕事の宿命であるなと感じ写真を現像した。写真には女性を後ろから押す手は映っていなかったが、
海から無数の白い手が波の様に伸びて、彼女を引っ張っていた。
彼女は後ろから押されたのではなく海に住まう何者かに引きずり込まれたのだった。