隙間女|怖い話


隙間女

ある男が東京都内で格安の物件を見つけた。

周辺の物件に比べて家賃が3割くらい安い物件だったが、築浅で内覧したけれども特にこれといった問題はない。

「ラッキー。掘り出し物件見つけちゃった!」

不動産屋も「こんな物件はなかなか出てこないですよ!大家さんがこの価格でというのでご紹介しているんですが、もっと高くても借り手はいますね。」

という。

男はその物件に引っ越す事に決めた。

引っ越してきて最初の日。部屋の居心地はとても良かった。マンションを出ればすぐにコンビニがあるし、駅から徒歩4分の高立地条件である。

引っ越しに荷物の片付けも一段落ついたところで男はその日の疲れもあって睡魔に襲われた。ソファーに横になるといつの間にか寝てしまったようだ。

気がつくと夜の3時を回っていた。

「まずい。こんな所で寝てたら風邪ひくな」男は布団を敷こうとした。が、何かがおかしい。一人だけの部屋なのに誰かがいるような気がする。

もっと言えば、誰かがこっちを見ている気がする。

気のせいだ。男はそう思って、眠りについた。

しかし、その視線は次の日もその次の日も感じた。

誰かが見ている。

男は部屋の中をくまなくチェックしたが、誰もいないし何もない。

ある日、帰宅すると本棚に置いてあった本がソファーに置いてあった。その本は10年くらい前に買った本で今更読むはずも無い。

男の不安は募っていった。

男は自分の部屋にカメラを設置した。4台のカメラで部屋のすべてが監視できる。1日中カメラを起動させて。男は仕事にいった。

仕事から帰宅すると男は映像をチェックした。誰もいない部屋。一人暮らしなのだから当たり前なのだが男は真剣に映像をチェックした。

やはり、気のせいか?俺は疲れているのかな?そういえば、生活環境も変わったりして気づかない間に疲労を蓄積していたのかもしれないな。

そんな事を考えながら映像をぼんやり見ていると部屋の一部にあり得ない変化が起きた。

クローゼットの扉が少しずつ開いて行く。

本当にゆっくりスローモーションの映像のようにクローゼットが開いて行く。

男は意味がわからなかった。

そして、ゆっくり開ききったクローゼットの中には知らない女がうつろな目で部屋をぞいていた。

男は、今、自分の真後ろにあるクローゼットを見る勇気が無かった。冷や汗がにじみ出る。硬直した男。シーンと静まり返った部屋。男はその場から逃げ出そうかと思った。

その時。男のうしろから

「気がついたね。」

知らない女の声が聞こえた。

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